国内で使用されている抗補体薬(補体阻害薬)一覧 (2024年PNH俱楽部作成)
販売者名をクリックすると外部リンクで(販売者による)薬の説明頁が表示されます。閲覧者の責任においてご覧ください。
※順不同
薬の名前(商品名) | 一般名 | 販売者(リンクから薬の販売者の説明頁やPDFなどに移動します) |
ソリリスⓇ |
エクリズマブ | アレクシオンファーマ合同会社 |
ユルトミリスⓇハイ |
ラブリズマブ | アレクシオンファーマ合同会社 |
エムパベリⓇ | ペグセタコプラン | 旭化成ファーマ株式会社 |
ボイデヤⓇ | ダニコパン | アレクシオンファーマ合同会社 |
ピアスカイⓇ | クロバリマブ | 中外製薬株式会社 |
ファビハルタⓇ | イプタコパン | ノバルティス ファーマ株式会社 |
溶血への対応
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)溶血の治療薬として、抗補体C5抗体であるエクリズマブ(ソリリスⓇ)が開発され、顕著な溶血抑制効果に加え、血栓症発症リスクの軽減、溶血に伴う平滑筋攣縮症状(嚥下困難、男性機能不全、肺高血圧など)の緩和など、様々な効果が示された。
患者QOLや生命予後も劇的に改善し、妊娠・出産も検討可能になったが、髄膜炎菌感染症に対する対策の重要性が再認識されている。
エクリズマブの改良型リサイクル抗体であるラブリズマブ(ユルトミリスⓇ)も2019年に承認され、これまでの2週毎の投与から8週毎に延長され、利便性は格段に向上した。2024年に承認されたクロバリマブ(ピアスカイⓇ)もリサイクル抗体であるが、皮下投与による自己注射が可能であるので、新たな選択肢が加わった。
骨髄不全への対応
しかしながら、これらの補体阻害薬は、骨髄不全に対しては効果を示さないため、別個に治療の可否を検討する必要がある(再生不良性貧血(AA)の診療の参照ガイド令和4年度改訂版における治療方針に準ずる)。
エルトロンボバグ(レボレードⓇ)やロミプロスチム(ロミプレートⓇ)などのトロンボポエチン受容体作動薬が難治性のAAに奏功することが示され、AA-PNH症候群の血球減少に対しても効果を示している。
血管外溶血への対応
また、抗C5抗体のような終末補体経路の阻害薬では、血管外溶血の出現が課題となっている。この課題を克服するためには、C3、FactorD、FactorBなどの近位補体経路を標的とすることが有効と考えられる。実際、2023年に承認されたC3阻害薬であるペグセタコプラン(エムパベリⓇ)の成績を見ると、ヘモグロビン値の回復は、明らかに従来のC5阻害薬より良好である。また、2024年に承認されたFactorD阻害薬ダニコパン(ボイデヤⓇ)とFactorB阻害薬イプタコパン(ファビハルタⓇ)も、ペグセタコプラン同様に良好な貧血回復効果を認め、経口剤なので非常に魅力的な薬剤と言える。ただし、これらの近位補体阻害薬では、血管内溶血に加えて血管外溶血も効果的に抑制するために、PNH型の赤血球は終末補体阻害薬(抗C5抗体)では通常60~70%程度であったものが、90%以上に濃縮されることが多いので、感染症などで補体が活性化した時に大溶血発作を起こす潜在的リスクがあることを理解しなければならない。これらを踏まえた上で、長期の有効性と安全性を検証していく必要がある。このように、PNHの治療は選択の時代に突入したが、それぞれの薬剤の特性(有効性と安全性を含む)と患者背景を考慮した上で、薬剤を選択することとなる。
ニュースレター「クローバー」27号(2020年)より転載 西村純一先生執筆(2024年加筆)(当会顧問)
上記のほかにも、患者それぞれの症状や検査値に応じて処方される薬があります。
下の表は、発作性夜間ヘモグロビン診療の参照ガイド(令和4年度改訂版)を参考に編集部が作成しました。右側の欄の「索引」は参照ガイド内の該当する項目があるページ番号です。
治療薬の名称など | PNH治療での使用目的 | 索引 |
抗補体療法 | 主に溶血の抑制など。上記の「最新の治療」や「PNHの治療」も参照ください。 |
24P |
副腎皮質ホルモン製剤 | 溶血や溶血発作などへ。抗補体薬の登場後は副作用の大きさが考慮されるようです。 |
25P |
輸血 | 溶血や骨髄不全などによる貧血に。 | 26P |
鉄剤や葉酸 | 溶血などによる貧血に使われる場合もあるようです。 | 26P |
ハプトグロビン製剤 | 溶血などによる急性腎障害や血栓の合併の予防にとのことです。同じ目的で輪液で利尿促進など | 27P |
免疫抑制剤 | 骨髄不全などへ。主に一次性骨髄不全型PNHにおいて使うようです。 | 27P |
G-CSF | 骨髄不全型で好中球減少があり、重い感染症が合併した時に使うようです。 | 27P |
蛋白同化ステロイド | 骨髄不全などへ使うようです。 | 27P |
同種・同系造⾎幹細胞移植など | 唯一の根治療法。PNH治療としてのエビデンスは蓄積されてないとのことです。 | 27P |
血栓溶解剤など | 溶血などによる血栓症に使うようです。 | 27P |
抗凝固剤など | 溶血などによる血栓症に予防的に使うようです。 | 27P |
※治療上の疑問や問題点は、診察室や医療相談会、個人相談などで専門医に直接ご相談ください。
上の表は患者交流会などでの対話に役立ていただけたらと思います。
PNHの定義と特徴
PNHの定義が非常に簡潔に表されている論文を以下に示します。
「PNHの血液細胞は、補体を制御する蛋白であるCD55(DAF)、CD59がないため、感染等で補体が活性化すると、補体の攻撃を直接受けて赤血球は血管内溶血をおこす。これらの補体制御蛋白は、GPIアンカー型蛋白と呼ばれる特殊な蛋白で、この蛋白群を合成するのに必要な遺伝子であるPIGA遺伝子に異常がおこる病気である。再生不良性貧血を代表とする骨髄不全疾患と、しばしば合併したり移行したりする。血栓症は日本人(アジア人)では稀であるが、PNHに特徴的な合併症である。」
血管内溶血と骨髄不全、血栓症がPNHの三大特徴といわれています。血管内溶血と血栓症は非常に密接に関係しており、溶血を補うために血液を造ろうとする反面、造血能力が低いという、相反する病態が混在しており、症状の出方や強さなどが患者さんごとに違うのが特徴的な疾患です。
会報「PNH俱楽部だより」№10(2016年)より転載。西村純一先生執筆(当会顧問)
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